パラレルワークとは
パラレルワークという言葉は、オーストラリア人経営学者のピーター・ドラッガー氏が、
自身の著書の中で提唱した考え方がもとになっています。
意味としては、パラレル(並行)+ワーク(仕事)という言葉の通り、
複数の仕事に並行して携わる働き方のことです。
冒頭でご説明したように、どれがメインのキャリアという考え方はせず、
本業をいくつも持つというイメージになります。
全ての仕事が必ずしも生活のための収入源である必要はなく、
ボランティアや学術研究、創作活動や投資など、個人としての幅広い活動も含みます。
なお、副業と異なる点は、副業は本業の他に収入を得ることを主な目的としているのに対し、
パラレルワークはそれぞれの仕事でキャリアを築くことを目的としているところです。
収入面ではなく、自立したキャリア形成を目指す働き方であることが、
パラレルワークの特徴なのです。
この考え方によって、ひとつのビジネスに依存せず、
複数のキャリアを並行して築いていくことが可能となります。
パラレルワークが広まった背景
パラレルワークが広まった理由としては、以下に挙げるような、
現代の企業の在り方やワークスタイルの変化が背景として存在します。
①ワークスタイルの多様化
働き方改革の推進により、現在、働き手のワークライフバランスや
ウェルビーイングを考慮した、自律的な働き方への関心が高まっています。
働く人々が柔軟な働き方を選択できるように、フレックスタイム制度や
テレワークの導入が進み、個々のワークスタイルも多様化してきました。
このように、新しい働き方が模索されている近年、自由な働き方のひとつの選択肢として、
パラレルワークが注目されているのです。
②企業寿命の短命化・転職の一般化
近年は企業寿命が短命化しており、定年前に企業寿命が終わるリスクがあります。
その影響もあり、従来の日本企業では当たり前だった、
終身雇用などの旧来の制度が機能しにくくなってきました。
転職も一般化し、ビジネスパーソンとしてひとつの企業やビジネスに依存しないキャリアを
考える必要が出てきたことも、パラレルワークが広まった要因のひとつです。
③企業へのメリット
企業から見ると、社員がパラレルワークによって社内では得られない経験を積むことで、
新しい視点やアイディアを持ち込んでもらうことができます。
その結果として、社員が企業外で培った経験やスキルが
企業のイノベーションに貢献することがあるなど、企業へのメリットもあるため、
近年はパラレルワークを推奨する企業も出てきています。
パラレルワークのメリット
パラレルワークの意味や背景を理解したところで、実際に複数のキャリアを
並行して形成していくことにはどんなメリットがあるのでしょうか。
以下にパラレルワークで得られるメリットについて整理しました。
①新たな経験が得られる
職種や業界などが異なる仕事をすることで、1つの仕事だけでは得られなかった
新たな経験を積むことができるため、スキルアップやキャリアアップが叶う可能性があります。
また、それぞれの仕事の経験が相互作用をもたらし、
新しい仕事のアイデア創出に繋がることもあるでしょう。
②人脈や視野が広がる
本業では仕事で関わる人が限定されており、人脈が広がらないと考えている人にも
パラレルワークは有効です。
パラレルワークによって新しい活動をすれば、新しい人との出会いが生まれるため、
自分次第で人脈を広げていくことができます。
また、新たな環境や人と仕事をすることは、自身の視野を広げることにもなります。
特に、自分とは価値観の異なる人の話を聞いたり、
大きな目標を持って行動しているような人と出会うことで、
自身も刺激を受け、新たなキャリア形成のヒントを得ることもできるでしょう。
③自己マネジメントのスキルが身につく
複数の仕事をしていると、個人で収入などを管理する必要が出てくるため、
収支の管理や確定申告などを行う経理スキルが身につきます。
また、パラレルワークは複数の仕事を両立させるために、
仕事のスケジュール管理や時間管理などのマネジメント能力も重要となります。
このような自己マネジメントのスキルは、ビジネスパーソンとして
どのような職種・働き方でも活かせるため、身につけておくとその後に役立ちます。
④リスクを分散することができる
複数の仕事を持っていれば、1つの仕事を失うようなことがあっても、
ほかの仕事が残るため、生活をする上でのリスク分散になります。
また、パラレルワークを行うことで、複数のスキルを持つことができるため
新たな仕事を探す必要が生じても、仕事の選択肢が広がります。
⑤夢を実現したり、得意分野を作れる
収入を得ることを第一の目的とはせず、まずは興味のある分野に取り組むことで、
夢を実現することができたり、新たな得意分野を作ることができます。
また、新しい仕事にチャレンジすることで、今の自分のスキルの棚卸しができたり、
今まで見えていなかった自分の魅力や可能性に気づくきっかけが得られます。
その結果として、今後身につけていくべきスキルや知識が明確になるといったこともあります。
パラレルワークの注意点
パラレルワークを始める際は、既存の仕事に影響が出ないように考慮する必要があります。
具体的には、以下のような点に注意して、計画的に準備を進めるようにしましょう。
・勤務先の就業規則を確認する
企業に勤めている場合、勤務先の就業規則を確認した上でパラレルワークを始めましょう。
パラレルワークが認められていない場合や、事前に申請が必要となる企業も多いため、
就業規則を確認せず始めてしまうと、トラブルになってしまうリスクがあります。
・既存の仕事に支障をきたさないようにする
パラレルワークを始める際は、すでに携わっている仕事がある状態で、
新しい仕事を始めるケースがほとんどです。
当初は余暇の時間を新しい仕事にあてることになるため、
体調管理や時間管理がおろそかになり、既存の仕事に問題が出ないように注意が必要です。
また、自身の心身の健康のために、リフレッシュの時間も確保しながら
それぞれのワークの時間を調整するようにしましょう。
まとめ
今は、ひとつの仕事に依存したキャリアを積むのではなく、
個人が自分のキャリアを考え、作り上げていく時代です。
キャリアの選択肢は増え、働き方の自由度が上がった時代であるといえます。
現代において、WLBやウェルビーイングを意識しながら満足度の高い働き方をするためには、
一人ひとりが自身のキャリアの考え方や価値観を持つことが大切です。
パラレルワークは、ひとつの仕事だけでは得られない経験やスキルを
手にすることができる働き方です。
そのため、仕事の時間のみならず、個人の人生をより豊かなものにすることができるでしょう。
この先の人生を考え、新たな経験を積みたいと考えていたり、
チャレンジしたいことがあるのであれば、ぜひパラレルワークを実践してみませんか。
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