コンサル業界でのワークライフバランス
実力主義のコンサル業界では、スキルの獲得は可能ですが、ワークライフバランスとの両立はできるのでしょうか。
実際に、ワークライフバランスの改善に取り組むコンサルファームが増加しています。
ここでは、その背景について説明します。
コンサル業界と働き方改革の波
2019年4月1日から働き方改革関連法が施行されました。
この法改正のポイントは、企業に対して「残業時間の上限設定」を義務付けたことです。
(以前は「行政指導」による目安がありましたが、法的に定められていませんでした。)
法定労働時間を超えて残業させる場合、36協定を締結し、労働基準監督署に提出する必要があります。
36協定では、月45時間、年間360時間を上限として残業が認められます。
超過する場合は特別条項を結び、労働基準監督署に提出する必要があります。
※特別条項では、月100時間未満、任意の期間内で80時間以内、年間で720時間以内という上限があります。
また、勤務間インターバル制度や高度プロフェッショナル制度など、柔軟な働き方が可能となる勤務制度も導入されました。
これらの働き方改革の影響で、コンサル業界でも労働時間の適正化に取り組む企業が増えています。
特にグローバルファームでは、労働時間や社員のモチベーションを国別に比較した結果、日本拠点が問題視されるケースがあり、数年前から働き方改革が進められています。
以前は深夜残業が当たり前であり、終電を逃してタクシーで帰ることもあった時代もありましたが、今日では働き方改革の取り組みやリモートワークの普及により、家に帰ることができない状況は減少しました。
もちろん、コンサルタントの忙しさはプロジェクトによって異なります。
しかし、各社は「適正な労働時間で成果を出し、効率的な働き方を追求し、長時間労働を減らす」という意識を持ち始めています。
これは、クライアントがコンサルファームに「働き方改革支援」を依頼するようになったため、ファーム自身も働き方改革を実現する必要があるためです。
実際に、18時以降のミーティング禁止や短日短時間勤務制度の導入など、長時間労働是正や柔軟な働き方の実現のための具体的な取り組みを行うファームが増えてきています。
短期離職の防止策
コンサル業界がワークライフバランスを整える理由の一つは、短期離職の防止です。
他の業界と比べ、コンサル業界では一定数の転職があり、転職は珍しいものではないと言えます。
ただし、コンサルファームが一人のコンサルタントを採用する際には、数十万から数百万のコストがかかります。
未経験者やジュニアクラスの採用の場合、研修やOJTなどの育成コストもかかるため、これらの費用は無視できません。
コンサルファームが採用したコンサルタントが「激務」を理由に半年や1年で離職してしまえば、ファームはそのコストを回収することができなくなります。
近年では健康経営の観点から、コンサルタントが心身ともに健康であることが重要視されています。
コンサルファームは、コンサルタントのワークライフバランスを整えることで、中長期的に活躍してもらうための環境を整えようとしています。
特に大手コンサルファームでは、労働時間の適正化や柔軟な働き方を実現するための具体的な取り組みが進んでいます。
とある戦略コンサルタントの事例
コンサル業界で働く人々は、コンサルファームのワークライフバランスについてどんな感想を持っているのでしょうか。
ある有名外資系戦略コンサルファームで働く女性コンサルタントは、「徹夜で働くことは既に時代遅れになった」と述べています。
彼女は、コンサル業界が「尖った人」が少数精鋭で働く環境から、チームで協力し合いながら働く環境へ変化していることを理由として挙げています。
これにより、子育てと仕事の両立が可能となり、彼女自身も子どもを2人育てながら業務を遂行しています。
ただし、業務が容易になったわけではありません。
個人のハードスキルだけでなく、協調性やチームワークも重要視されるようになっています。
この変化の背景には、テクノロジーとグローバル化の浸透によりビジネス環境が複雑化し、クライアントが抱える問題も多様化していることがあります。
複雑な課題を解決するためには、個人の知識だけでは対応が難しくなり、各方面の専門家が協力する必要があります。
その結果、チームワークがより重要視され、ワークライフバランスの改善にも繋がっていると言えます。
総合系コンサルの働き方改革の事例紹介
ここからは、各コンサルファームがワークライフバランスを確保するために行っている取り組みの事例をご紹介します。
企業によって「働き方改革」「ワークライフマネジメント」などと呼び方は異なりますが、いずれも各ファームにおける働き方の制度や考え方を表しています。
以下の総合系コンサルティングファームの事例をご紹介します。
・アクセンチュア
・デロイトトーマツ
・EY
・PwC
・KPMG
・ベイカレント
・アビーム
アクセンチュアの働き方改革「Project PRIDE」
アクセンチュアは、コンサルファームの中で働き方改革に成功した企業として最も有名なファームかもしれません。
アクセンチュアのProject PRIDEは、同社がビジネスコンサルティングで培った手法に基づき、「制度」と「意識」の両輪から実行した働き方改革です。
業界トップ水準のワークライフバランス
Project PRIDEでは、風土改革のフレームワークに沿って、以下の4つの軸で様々な施策を行ってきました。
①方向性提示と継続的な効果測定
②リーダーのコミットメント
③仕組み化、テクノロジー活用
④文化・風土の定着化
具体的な取り組みとしては、18時以降の会議の原則禁止や残業の適用ルール厳格化、フレックスタイム制度、短日短時間制度、在宅勤務制度の導入などが挙げられます。
この結果、1人あたりの平均残業時間が1日あたり1時間に減少し、離職率を実施前の半分に、有給取得率を70%から85%に向上させ、女性比率も22.1%から35.5%(2021年3月時点)に増加させるなどの成果を挙げたとのことです。
また、男性社員の40%が育休を取得しており、平均して一度に102日間の育児休暇を取得しています。
女性社員の育児休暇取得率は100%で、平均300日以上の育児休暇を取得しています。
このように他社に先駆けて全社的な働き方改革に着手した同社は、現在では業界トップクラスのワークライフバランスと高報酬を同時に実現しており、社外からも優秀な人材を惹きつけています。
アクセンチュアの出産・育児支援
アクセンチュアでは、出産・育児をサポートする下記のような制度を用意し、ワークスタイルの選択肢を提供しています。
<できるだけ休んで子育てに専念したい方に>
・母体保護休暇(月1回通院時および80時間まで)
・出産休暇(産前6週/産後8週まで)
・育児休業
・配偶者・ライフパートナー出産休暇(1日・出産前後1か月以内)
<仕事はしたいが働く時間を調整した方に>
・育児休憩時間(1日30分×2回)
・短日短時間勤務制度(週3日および20時間以上の範囲内で勤務時間の選択可)
・子の看病休暇(子供1人:年40時間、子供2人以上:年80時間/無給)
<出産前と同様、フルタイムで働きたい方に>
・在宅勤務制度
・ベビーシッター費用補助
・内閣府ベビーシッター割引券の無料配布(1日4400円の割引券)
・ベビーシッター法人契約(当日ベビーシッター予約可能かつ病児保育対応)
・育児コンシェルジュサービス
ボトムアップで作られる働きがい
また、約1万5千人の従業員(2021年4月時点)がオンラインツールやRPAなどのデジタルをフル活用し、生産性を高めながら士気向上に取り組むことで、働きがいのある企業としての認知が高まっています。
2021年には、Great Place to Work Institute Japan(GPTWジャパン)が主催する日本における「働きがいのある会社」ランキングにて、5年連続でベストカンパニー入りし、14位を獲得しました。
また、「OpenWork」が発表する「働きがいのある企業ランキング2021」でも、11位にランクインしています。
同社の特筆すべき点は、こうした改善をボトムアップで行っていることです。
実際にアクセンチュアに入社された方からは、以下のような働き方改善の仕組みについてのコメントをいただきました。
「社内改善活動の一環として、定期的に社内アンケート(PRIDE Survey)を実施し、会社に対する満足度を集計しています。
良い点も悪い点も全社で共有し、改善活動が継続的に行われています。
マネージャーの稼働時間の問題やマネージング・ディレクターの改善意識など、以前であれば隠されていたであろう課題もオープンに共有されており、良い意味で驚かされました。
社員と組織が課題を直接エスカレーションできる仕組みがとても良いです。」
D&Iにも積極的
アクセンチュアは長年にわたりダイバーシティ&インクルージョンに積極的に取り組んでおり、日本では「PRIDE指標」において、2016年以降4年連続で最高評価であるゴールドを受賞しました。
また、日経WOMANが選出する2020年版「女性が活躍する会社BEST100」では総合2位にランクインしています。
デロイト トーマツの働き方改革
デロイトトーマツコンサルティングおよびデロイトトーマツグループは、メンバーの心身の健康力向上を目的とした働き方改革を実施しています。
デロイトの働き方改革には以下の4つのアプローチと取り組みがあります。これらによって、「働き甲斐(心)」と「働きやすさ(身)」に繋がる取り組みを推進しています。
✅組織風土改革
・すべてのパートナー・ディレクターによる働き方改革宣言
・働き方改革ラウンドテーブルの開催
・誰もが声をあげやすいチャネル「Deloitte Speak up」の設置(24時間365日どこからでも連絡できる機密性の保たれたチャネル)
・One Firm(グループシナジー・コラボレーション)を加速する新オフィス
✅生産性改革・スマートワーク
・RPAを活用した生産性向上
・業務の標準化・集中化の促進(トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター)
・スマートワーク(在宅勤務・テレワーク拡大)
・バーチャルコラボレーションを加速させるツールの導入・拡大(Skype・Yammer・Office365)
✅Employee Experience
・Chatbot導入
・社内ニュース動画番組での好事例紹介
・受付業務のデジタル化
・フリーアドレス・ペーパーレスの促進
・ワークライフマネジメントによる働きやすさの実現(両立支援の取り組み)
・パフォーマンスマネジメントの変革(強みを重視し、未来視点かつリアルタイムで高頻度なフィードバック等によるパフォーマンス最大化に重きを置いた育成スキーム)
・中長期的なキャリア形成・育成を支援するコーチ制度
・最先端テーマへのチャレンジ機会の創出(デロイトトーマツインスティチュート設立)
・グローバルでの学びと交流の場の提供(デロイトユニバーシティアジアパシフィック)
・多様なキャリア形成支援、グループ間異動(Jobポスティング等)
・SurveyによるExperienceの経年モニタリング
・デロイトトーマツアラムナイ(デロイト卒業生と現役メンバーの交流・つながり強化)
✅健康経営
・長時間労働撲滅・休暇取得促進のグループモニタリングによる徹底
・HRデータのデジタルアプリケーションツール(Well me)の導入
・多様なメンバーが働きやすい環境を実現
また、DTCではワーキング・プログラムという、育児状況と目標設定の方法に応じた3つのコースが用意されています。
WP0:就業条件の個別設定(業務内容は通常と同様で勤務時間短縮はないが、始業・終業時刻を自分で設定できる制度)
WP1:就業条件の個別設定および目標軽減
WP2:就業条件の個別設定(時間外労働なし)および目標軽減
これらの取り組みの結果、「OpenWork」が発表する「働きがいのある企業ランキング2021」で、デロイトトーマツは18位にランクインしています。
また、同社は多様性と包括性(Diversity & Inclusion)を重要な経営戦略と位置づけており、任意団体work with Pride策定によるLGBTへの取り組みを評価する「PRIDE指標」では、2020年に3年連続で最高位のゴールドを受賞しています。
EYのワークライフマネジメントの推進
EYストラテジー・アンド・コンサルティングおよびEY Japanグループは、従業員が多様な働き方を実現できるよう、「ワークライフバランス」ではなく「ワークライフマネジメント」という考え方を推進しています。
EYのワークライフマネジメント
ワークライフマネジメント推進の一環として、EYは下記のようなフレキシブルワークの推進を積極的に進めています。
🔽フレキシブルワークの推進事例
・有給休暇(時間単位で取得可能)
・配偶者出産休暇
・監査繁忙期の祝日出勤日のイベント託児
・在宅勤務
・フレックスタイム制度/選択型シフト勤務制度/中抜け勤務制度
・朝勤務の奨励のインセンティブ支給
・留学、研修などの自己啓発、ボランティア活動を目的とした休職
育児休業や介護休業においてもEY Japan独自のフレキシブルワークプログラムを導入しています。
また、LGBTの職員が自分らしく働ける環境作り、女性活躍推進、障がい者活躍推進など、ダイバーシティへの取り組みも積極的に行っています。
実際にEYにご入社された方からも、次のようなコメントを頂いています。
「会社自体が残業を前提にする文化ではありません。
また、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンを前面に押し出していて、LGBTの方含め、働きやすい雰囲気があると思います。
また、現在はリモートワーク中心で、出勤するケースは多くありません。
クライアントとの打ち合わせもWebミーティングが中心です。」
PwCの働き方改革/健康経営
PwCコンサルティングおよびPwC Japanグループは、多様なライフスタイルを可能にする働き方改革を推進しています。
PwCの働き方改革
PwC Japanグループでは、東京エリアにおける主要法人の拠点を大手町に集約し、連携強化と業務の効率化を図っています。
中でも2020年末に開設したOtemachi One タワーのオフィスは、ニューノーマル時代にふさわしい新たな働き方を率先して実践していくためのユニークな場となることを目指しています。
また、G Suiteの導入などのテクノロジー活用をはじめとして、下記のような様々な制度や施策を取り入れています。
🔽柔軟な働き方を支援する制度や施策について
・リモートワーク
・コアなしフレックスタイム
・時短勤務(一日あたりの勤務時間の短縮)・短日勤務(一週間あたりの勤務日数の短縮)
・ペーパーレスの推進
・長時間労働を予防する諸施策
・夜間・休日のメールや電話を制限するコミュニケーションルール
・残業時間のモニタリング
・管理職向け労務管理研修
※ PwC Japanグループの法人ごとに利用できる制度が異なります。
その他、ワーキングペアレンツ支援制度として、保活コンシェルジュや大手町事業所内託児所/提携保育園の利用が可能です。
また、PwC Japanでは、コロナ禍以降、職員の大半がリモートワークに移行する中、OJTによる人材開発が難しくなっているという背景より、VRを活用した人材開発・育成も試験的に始めているようです。
PwCのウェルビーイング(健康経営)
また、会社としてウェルビーイングを重視しており、下記のような取り組みも積極的に行っています。
🔽ウェルビーイング(健康経営)の取り組み
・健康維持・増進活動の推進
・メンタルヘルス対策の推進
・長時間労働対策の推進
PwC Japanグループ代表は、PwC Japanのウェルビーイングについて下記のように語っており、組織としてコミットしていくことを掲げています。
「私たちが最終的に目指しているのは、従業員一人一人が心身ともに健康であり、PwCグループで働くことで成長実感や幸福感を感じ、自律的に高いモチベーションで仕事に取り組める組織です。」
KPMGのプロジェクトLEAP
KPMGコンサルティングは、代表の宮原氏がリードする形で進める働き方改革として、「プロジェクトLEAP」を発足させています。
旧来の硬直的な働き方や価値観を見直すだけではなく、KPMGコンサルティングの全てのプロフェッショナルが生き生きと、そして、効率的に働き続けることができる環境を作るという決意を込めて、”働き方改革プロジェクト”ではなく、”LEAP(飛躍)”という名をつけたそうです。
“LEAP”には”Lead Evolution Accelerate Productivity(変革を導き、生産性を向上させる)”という意味の英文の頭文字をとった、二重の意味があります。
プロジェクトLEAPの3つの主要推進テーマ
プロジェクトLEAPは、「時代に合ったProfessional Wayを実現させて、KC(※)ファンを社内外に拡大する」というコンセプトに基づき、以下の3つのテーマを積極的に推進しています。
※KC=KPMG Consulting
① 社員が健康で長期的に働ける”職場環境”づくり
・柔軟な働き方の導入
・長時間労働の是正
・有給休暇の取得促進
② 効率的に働き、”時間あたり生産性が高まる仕組み”づくり
・業務工数の削減
・業務自体の質の向上
③ 互いをリスペクトし、共に成長しようとする”文化・風土”づくり
・時間に対する意識改革
・Valueに対する意識改革
・社員が健康で長期的に働ける”職場環境”づくり
プロジェクトLEAPでは、社員一人ひとりが心身ともに健康でいるために、以下のような取り組みを実施・推進しています。
●フレックスタイム制
2020年10月1日より、一部のコンサルタント職に適用していた裁量労働制を廃止し、管理職を除くすべての社員にフレックスタイム制度を適用しました。
● 在宅勤務制度
VDIやコミュニケーションツール等も整っているため、オフィスと差異のない環境で仕事が進められ、ストレスもないとの声が上がっています。
● 服装選択の自由化
柔軟で制約の少ないWorking Styleを実現するための意識改革を実施しています。
● 長期特別休暇制度(ライフプラン支援休暇・サバティカル休暇制度)
ライフプラン支援休暇は、海外等遠方に赴任しているご家族への付き添い、ご家族の傷病看護、ご自身のライフステージの変化に伴う休養にまとまった休みを必要とする場合に利用できます。
サバティカル休暇は、プロフェッショナルとしての成長とさらなるスキルアップのため、そして、少し立ち止まって心身の充電をしたい方のための制度です。
● Multi-Experience Program(MEP)
KPMGの業務範囲と重複しないものに限り、法的要件も含めた社内審査をクリアすれば、副業が可能になるプログラムです。
例えばNPO活動に参画し、多様な背景を持つ方々とのコミュニケーション能力を高めたり、自身の文章力を生かして作家・小説家として活動したり、書道やピアノの先生として教室を開催したりする活動も可能です。
効率的に働き、”時間あたり生産性が高まる仕組み”づくり
LEAPでは、”時間活用改革”という施策で、プロフェッショナルにとって時間あたりの生産性向上の啓発と、日々の業務における時間活用に関連する課題解決に取り組んでいます。
他にもオフィス消灯時間を早める、会議設定時間帯を日中に限定するなど、さまざまな取り組みを行っています。
【KCミーティング5ヵ条】
① 適したタイミング・やり方・参加者で!
② 会議情報は事前に共有!
③ 遅刻厳禁! 開始・終了時間は厳守!
④ 会議に集中!
⑤ 最後にToDo確認!
互いをリスペクトし、共に成長しようとする”文化・風土”づくり
LEAPの理念・進捗を広く周知するだけでなく、コンプライアンス意識の啓発のためにも、隔月でニュースレターを通じて情報を配信しています。
また、ニュースレターは社内の意見公募機能を担うこともあるようです。
ベイカレントの働き方改革
ベイカレント・コンサルティングは、健康維持・増進を経営の重要テーマと位置付け、従業員やその家族がいきいきと働ける環境づくりを行っています。
以下はその一例として挙げられる制度です。
🔽子育て・介護支援制度
・女性社員の産前・産後休暇、育児休暇の取得率は100%となっており、休暇取得者の全員が復職(2019年度)。
・男性社員の育児休暇取得率は35%であり、社員の産前・産後休業や育児休業の取得について積極的な制度活用を推奨しています。
このような取り組みの結果、2021年8月17日には次世代育成支援対策推進法に基づき、厚生労働大臣より子育てサポート企業として「くるみん」の認定を取得しています。
ベイカレントの働き方改革
ベイカレント・コンサルティングは、東証一部上場企業であり、ガバナンスを効かせることで働き方改革を実行しています。以下はその一例となります。
・労使間で定めた36協定を遵守し、1カ月の残業時間が所定の残業時間を超過しそうな従業員を検知した場合には、労務部門から各部門・各プロジェクト責任者を通じて注意喚起を促し、所定残業時間を超過しないように配慮します。
・1人当たりの平均残業時間は、1カ月あたり21時間(2019年度)です。
・育児・介護休業法の定める育児のための所定労働時間短縮の措置を上回る、時短勤務制度を導入しています。
・働き方改革関連法に基づく5日以上の有給休暇を従業員に取得させるため、積極的な有給休暇の取得を推奨しています。
ベイカレント・コンサルティングへ入社された方々からは、以下のようなコメントをいただいております。
「前職のファームと比較して、ワークライフバランスが大幅に改善しました。
おかげで、子供や家族と過ごす大切な時間が増えています。
年収も大幅にアップしているので、家族も満足している様子です。」
「案件を受注する際に、“短納期”や“明らかなリソース不足”などの無茶な取り組みをせず、会社全体で統制が効いている印象を受けます。」
このような取り組みの結果、ベイカレント・コンサルティングは、「OpenWork」が発表する「働きがいのある企業ランキング2021」において、全体6位(コンサルファームとしては1位)にランクインしました。
また、2021年には経済産業省と日本健康会議が主催する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門において、優良な健康経営を実践している法人として「健康経営優良法人(ホワイト 500)」に継続的に認定されています。
アビームのワークスタイル変革 ABeam Business Athlete®
アビームコンサルティングでは、コンサルタントをスポーツ選手になぞらえた『Business Athlete』と定義しています。
ハイパフォーマンスを維持するためのワークスタイル変革を継続しており、健康経営やダイバーシティの促進、物理的な職場環境の改善、継続的な生産性向上を実施しています。
さらに、出産・育児支援などの制度も充実しています。
アビームコンサルティングは、国内大手企業の中でも最高水準のワークライフバランスと労働環境を提供しています。
コンサルティングファームでは珍しいCWO(Chief Workstyle Innovation Officer)を設置し、現在CWOに就任している岩井かおり氏が「Smart Work」「Diversity & Inclusion」「Well-Being」という3つの取り組みをリードしています。
岩井氏は、アビームの働き方改革について以下のように述べています。
「このWorkstyle Innovationを通じて、社員一人ひとりやチームとしての価値、そしてクライアントへの価値提供を継続的に向上させるだけでなく、社員が自律し、社会の変化にしなやかに対応することで社会の持続的な成長に対しても責任を持って、アジア発グローバルコンサルティングファームとして進化していくために、経営戦略としてこの取り組みを推進していきます。」
さらに、アビームコンサルティングはニューノーマル時代の新しい働き方として、社員一人ひとりの価値観に合わせた自律的な働き方を選択できる『Biz Athlete Workstyle 3.0』を2021年1月から推進しています。
以下は、アビームコンサルティングが導入中または導入予定の施策です。
🔽導入中の施策
・リモートワークの推進(2020年10月から実施済):柔軟な働き方のために、オンサイトワークから自宅やクライアント先などを選択可能にし、コミュニケーションを円滑化するためのデジタルツールを導入。
・フルフレックス制度(2021年4月導入):コアタイムを廃止し、柔軟な働き方を実現するための制度。時短勤務と併用も可能。
・自己研鑽休職制度(2021年1月導入):大学院での学位取得や国際貢献活動に参加するための休職制度。
🔽以下、今後導入予定の新施策
・フルリモート制度
・短日勤務制度(週3日・4日勤務制)
・副業制度
これらの取り組みにより、アビームコンサルティングは「OpenWork」の「働きがいのある企業ランキング2021」において、全体で7位(コンサルファームとしては2位)にランクインしています。
また、2021年には経済産業省と日本健康会議が主催する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門で4年連続で「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定されています。
コンサルのワークライフバランスを決める要素
ここまで、コンサルファームがワークライフバランスを重視するようになった背景と、総合系コンサルファームを中心とした実際の取り組み事例をご紹介してきました。
各社が様々な取り組みを行っていることはご理解いただけたかと思いますが、実際にコンサルファームのワークライフバランスを決める要素にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、コンサルファームのワークライフバランスを決める要素について解説します。
プロジェクトの内容
コンサルタントが担当するプロジェクトの内容は非常に多岐にわたります。
その中でも、プロジェクト期間が短く、かつ体系的なアプローチが難しい、検討する領域が広いプロジェクトはハードワークを強いられることも多いと言えます。
例えばDDは体系的なアプローチが可能ですが、検討領域が広くなる傾向にあります。
また中期経営計画の策定は、検討領域が広く体系的なアプローチも存在しません。
このような戦略系のプロジェクトは1-3か月程度の限られた時間で膨大な作業・思考が必要となる傾向があり、ワークライフバランスの調整が難しい場合があります。
そのようなプロジェクトとしては、他にM&A系や再生系のプロジェクトが該当します。
一方で、IT系など、期間が1年以上となるような中長期的なプロジェクトにおいては、ワークライフバランスのコントロールが比較的しやすいようです。
職位に紐づくタスクの違い
また、アナリストやコンサルタントクラスで入社した場合、職務としては、下記のようなタスクをこなしていくこととなります。
・インタビュー調査、アンケート調査による情報収集
・書籍やインターネット等による、業界や事例のリサーチ
・データ分析や、スライドなどの資料作成
こうしたタスクにおいては、作業効率が大きく労働時間を左右します。
慣れるまでは仕事の効率が悪く、どうしても勤務時間も長くなってしまう傾向にあると言えるでしょう。
また、必要なデータを集めるためには筋の良い仮説を構築する必要がありますが、初めは的外れなものになることもあります。
マネージャーやパートナーからのフィードバックを受けて、この仮説構築が筋良くスピーディーに行えるようになれば、作業を早く終わらせることができるでしょう。
マネージャーの優秀度
マネージャーの優秀度もワークライフバランスに大きく影響します。
プロジェクトマネージャーがプロジェクトを上手にコントロールできる場合、部下のワークライフバランスコントロールも可能と言えます。
特に部下の得意分野を見極め、うまく仕事を割り振ることができ、かつ品質を担保できるマネージャーの下で働くことができれば、労働時間は適正なものとなります。
しかし、次のように、プロジェクトのスコープを広げてしまうプロジェクトマネージャーの場合、ワークライフバランスの実現は少し難しくなる可能性があります。
スコープが広がるか
マネージャーやパートナーは売り上げのKPIを担っているケースが多く、新規で案件を取るか、現在の案件からの継続を選ぶことが一般的です。
その際、新規案件を獲得するのは大変なため、現在の案件の継続を狙うことが多いと言えます。
マネージャーやパートナーとしては、案件のスコープが広がった方が売上が立つため、課されているKPIが厳しい場合はスコープを広げたいという考えが生じます。
(そしてこの点が、営業を行わず、デリバリーだけに特化したい、というマネージャーやパートナーの転職動機となっているのです)
売上としては有利ですが、スコープが広がると現場での実務を行うコンサルタントの負荷が増えるため、ワークライフバランスに影響が出ると言えます。
報酬の高さ
ワークライフバランスという概念は、必ずしも労働時間を減らすことだけを指すわけではありません。
生活の質を向上させる観点では、報酬水準も非常に重要な要素となります。
一定の労働時間があっても、高い報酬を得ることで経済的な余裕が生まれ、生活水準を向上させることができ、生活の満足度が高いという方もいます。
人によって異なりますが、「労働時間が短い=ワークライフバランスが実現している」とは一概には言えません。
コンサルティング業界は他の業界に比べて報酬が高い業界と言えます。
SIerからコンサル業界に転職した方の中には、次のように述べる人もいます。
「案件次第で忙しさはありますが、年収は以前に比べて多少改善され、転職して良かったと思っています。
不満だった時給単価も圧倒的に改善され、生活としても満足しています。」
このようなワークライフバランスの実現方法も、コンサル業界ならではの特徴と言えるでしょう。
スキルアップの可能性
ワークライフバランスは労働時間の問題だけではありませんが、報酬に加えて成長実感も非常に重要な要素となります。
コンサル業界では、業務を通じて高度な専門スキルを身につける機会が多いため、成長を実感できることが仕事と生活の満足度を高めるケースもあります。
ただし、ファームによって獲得できるスキルは異なるため、自身が望むスキルや成長を得られるコンサルファームを選ぶ必要があります。
激務ランキングに意味はない?
ここまで、コンサルタントのワークライフバランスを決定する要因をご紹介しました。
次に気になるのは、ご自身の行きたいファームがどれくらいワークライフバランスを実現できるのかです。
関心のある方が多いため、コンサルファームの激務度(残業時間など)を順位付けし、ランキングとして発表しているサイトも存在します。
しかし、このようなランキングに意味はあるのでしょうか?
実際のところ、ファーム毎の激務度のランキングには全く意味がないと言えます。
より正確に言えば、コンサルファーム全体の残業時間は、ご自身の残業時間とは関係がない可能性が高いということです。
なぜなら、コンサルタントの忙しさはほとんど「プロジェクトによる」からです。
これは、多くのコンサルタント経験者が一様に口にすることでもあります。
個々のコンサルタントの忙しさは、会社ごとよりもプロジェクトの内容に大きく左右されるのです。
また、入社時の職位や直属のマネジメントの優秀さなど、個別の要素にも左右されます。
したがって、働き方改革を推進している企業が全員のワークライフバランスを良くしているとは限りません。
そのため、ファーム毎の激務度ランキングを鵜呑みにして入社の意思決定をすることはお勧めできません。
ただし、本コラムでも総合系コンサルティングファームの働き方改革の取り組みを紹介しましたが、会社としての方向性は改革に反映されているため、働き方改革を進めている会社ほど、ワークライフバランスを実現できるコンサルタントの割合も多くなると言えます。
コンサル転職を希望される方にとっては、まず会社がどれくらい働き方改革を推進しているのか、そしてご自身が入るユニットやチームのプロジェクトの傾向を調べることをお勧めします。
ワークライフバランスと成長の両立は可能か?
コンサルファームでのワークライフバランスを考える上では、プロジェクトの内容やスコープ、マネージャーの優秀度、給与やスキルなどが重要な要素であり、激務度ランキングは信頼性に欠けることを説明してきました。
ここでは、労働時間を抑えたいという願望と、給与やスキルを伸ばしたいという願望を両立させるワークライフバランスの実現について解説します。
・簡単なことではないが工夫次第では可能
コンサルタントの仕事は非常に高度な能力が求められ、他の職種と比べてもより高いプロ意識が要求されます。
また、コンサルタントの仕事はクライアントワークであり、プロジェクトの期間が決まっています。
プロジェクトが佳境に差し掛かったり、クライアントから急な対応を求められたりする場合、一時的に長時間働くことが避けられないこともあります。
しかし、工夫すればコンサルタントであっても、スキルアップとワークライフバランスの実現は可能です。以下にその方法を2つ紹介します。
①アベイラブル期間を活用する
コンサルタントのアベイラブル期間とは、プロジェクトにアサインされていない期間のことです。
社員にとってアベイラブル期間は基本的に仕事のない期間であり、時間の使い方を自分で決めることができます。
アベイラブル期間をうまく活用すれば、スキルアップのために集中的に学習したり、休暇を取得して余暇を楽しんだりすることができます。
中には入社時に15日以上の有給休暇を付与するファームもあり、積極的な有給休暇の取得を奨励しているところもあります。
このような期間を有効活用することが重要です。ただし、稼働率(稼働日数÷勤務日数)を評価基準に設けているコンサルファームも多いため、アベイラブルが続くと評価が低下する可能性に注意が必要です。
②経済的余裕を活かして時間を買う
前述の通り、コンサルティング業界では高い報酬を得ることができ、年収1,000万円を超える人も珍しくありません。
高い報酬を活用して時間を確保するという選択肢を選び、ワークライフバランスを実現しているコンサルタントは多く存在します。
例えば、移動時間にタクシーを利用して仕事を進めたり、リモートワークで生産性を高めるためにデスク環境に投資したりすることがあります。
また、子育てをしながら働くコンサルタントは、経済的な余裕を活かして家事や育児を外部に委託することも可能です。
実際に、ハウスキーパーやベビーシッターなどを上手に利用し、確保した時間を趣味や学習に充てることで、仕事とプライベートの両方を充実させているコンサルタントもいます。
コンサル業界でもワークライフバランスは実現可能
以上のように、コンサル業界においてもワークライフバランスを実現することは可能です。
ただし、ワークライフバランスは働くファームやプロジェクトによって異なるため、採用セミナーや企業説明会に参加して働き方や社風を知ることが重要です。
また、コンサル業界に特化したエージェントは各ファームの特徴や違いに詳しいため、ワークライフバランスの実態についてエージェントに相談することも一つの手段です。
自分に合ったファームやプロジェクトを選ぶことで、ワークライフバランスと成長の両立が可能となるでしょう。