ニューヨークで「不動産オーナーがAIを使って家賃を設定することを禁じる法律」が成立しました。
世界初の「AIによる談合」を禁じる法律です。
🤖 AIによる価格吊り上げ
日本ではあまり知られて居ませんが、米国Real Pageなどの家賃最適化ソフトウェアは、AIを使って市場データを分析し、最適な賃料を設定することが可能になっています。
物凄く便利なサービスですが、 一点問題が。
それは、競争関係にある大家同士がこういったソフトウェアを利用すると、家賃が協調的に引き上げられてしまう、ということです。
たとえば、オーナーAもオーナーBもRealPageを使用した場合、両者のAIがリアルタイムで互いの物件の家賃や需要反応を学習します。
すると、「Aが値下げすればBも下げる」「Bが値上げしても入居が決まるならAも追随する」といった動きをAI同士が自動的に学習・模倣してしまい、
結果として競争が起きない・全体が高止まりする結果となる、というわけです。
合理的にしか動けないAIが導く、ナッシュ均衡的な価格到達点ですね。
これがNYにおける不動産価格高騰の一因とされ、問題視されていました。
今回の法律は、こういったAIを通じて家賃を設定する行為を「談合」と見做し禁ずるものです。 仮に大家がAIに任せていただけで、自身には談合の意思が無かったとしてもです。
⚖️ 法律の「穴」
日本でも談合は独占禁止法で禁止されています。
ただ、その禁止対象たる「談合」の定義は「事業者間の意思の合致による価格操作」とされています。
そして、現行法上「事業者」は個人と法人だけを意味しており、AIは含まれません。
では、AI同士が勝手に競争を避け相談により価格を決定した場合、
それは「事業者間」の「意思の合致」と言えるのでしょうか?
💡 AIがやったことは、誰の罪になるのか?
人間がやったら罪とされることを、AIにやらせたら罪にならないのか?
これは談合罪だけでなく、詐欺罪や背任罪などの他の犯罪類型にも当てはまる問題です。
現行法は基本、人間と法人だけを責任主体としており、 AIそのものが法的責任を負うことを想定していません。
また、人間・法人が責任を負うのは、故意や過失など落ち度があった場合のみです。
この原則を素直に当てはめれば、AIが自律的に考え実行したことについて、人間・法人が責任を負うことはありません。
それじゃまー困る時があるよね、ということは明らかな訳で・・・
これは法の不備なのでしょう。
まだ現実的な問題にはなっていませんが、
近い将来、大問題となるのではないでしょうか。
AIで自律駆動するロボットが人を殴ったら所有者は傷害罪を問われるのか?
AIが詐欺的な方法で金を奪ったら詐欺罪になるのか?等々。
🗣️ 現在の議論と課題
この問題について、現時点でも議論している人達はちゃんと居て、
実は「AI推進法」という法律もあったりするのですが、
せいぜい倫理理念を定めた程度で上記の課題に対する解決策にはなっていません。
AIは法律の世界をも大きく揺さぶっています。
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