【転職体験談】息子のひと言で、心に火がついた

都内の老舗メーカーで20年近く働いてきた。
役職は部長代理で、待てば確実に昇進できる状態。
「安定しているじゃないか」と言われればその通りだし、
もともと贅沢しないタイプだったので給与も問題ない。
だが、ある日の昼休みに見ていたSNSに、
「同期が外資系に転職し年収が1.5倍になった」
という投稿が流れてきた。
なんだか、胸の奥がチクリとした。
その日からだ。
会議の最中、部下の報告を聞きながらもどこか上の空で、
自分がこの組織で何を生み出しているのか、
ぼんやりと考えてしまうようになった。
「今さら転職なんて、リスクが大きすぎる」「家族だっている」
自分を納得させる言葉は、いくらでも思いついた。
けれど毎朝、鏡の中でネクタイを締める自分を見ながら、
どこか嘘をついているような気がしていた。
転機は、ある夜のことだった。
深夜まで資料を作り、くたくたで帰宅した僕に、息子が一言。
「パパ、お仕事楽しい?」
一瞬、答えに詰まった。
「まあまあかな」と笑ってごまかしたが、彼の目は鋭かった。
ごまかしが効かない。
小学生の息子の問いが、重く、深く刺さった。
「このままで、本当にいいのか?」
その夜は眠れなかった。
気づけばスマホで「40代 転職 成功例」と検索していた。
すぐに転職エージェントに登録したわけじゃない。
ただ、自分が何に悩んでいるのか、どんな未来を望んでいるのか、
誰かに話して整理したかったのだ。
数週間後、思い切ってキャリア面談を受けた。
「転職したくなるときって、理屈より気持ちが先なんですよね」
エージェントの一言に、肩の力が抜けた。僕の「くすぶり」は、理屈じゃなかった。
理不尽な評価。見えない昇進の天井。
やりたいことを口にするたびに冷ややかな目を向けられる空気。
そんな環境で、20年もよく我慢してきたものだ。
「自分のために、動いていい」
そう思えた瞬間、自分の人生を取り戻すような感覚がした。


