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AIエンジニアを目指す人が最初に知っておきたい基礎知識

2025.05.07

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AI(人工知能)は、今後の社会や産業を支える中核的な技術として、さまざまな分野での活用が広がり続けています。

大手企業はもちろん、ベンチャーやスタートアップ企業でもAI技術に期待が集まっており、今まさに成長が加速している領域です。

一方で、AIエンジニアの需要は高いにもかかわらず、専門スキルを持った人材は不足しており、人材獲得競争が激しくなっています。

ただし、高度な専門知識が求められる職種のため、未経験からのチャレンジは容易とは言えず、Pythonなどのプログラミングスキルや統計・数学の基礎を自主的に学んでおく必要があります。

ここでは、AIエンジニアへの転職を検討している方に向けて、基礎知識とAIの注目活用分野をご紹介します。

AIとは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。

一般的には、「人間の知的な判断や思考をソフトウェア上で再現する技術」と理解されています。

単なるルールベースの自動処理ではなく、状況に応じて最適な回答を導き出すことができるのがAIの特徴です。

近年の技術進展の中で特に注目されているのが「ディープラーニング(深層学習)」です。

これはニューラルネットワークを活用し、大量のデータから共通パターンを抽出することで、AIが自ら高度な判断を下せるようにする技術です。

将棋AIがプロ棋士に勝利したことなどでも知られていますが、現在では画像認識や自然言語処理など、さまざまなシーンで応用が進んでいます。

また、GAN(敵対的生成ネットワーク)をはじめとした生成系AI技術も急速に発展しており、仮想空間の生成や画像変換などに活用されています。

ただし、実務実装やハードウェアとの連携など、技術的な課題も残されており、今後も進化の余地が大きい分野です。

AIの普及が急速に進んでいる背景には、その高い汎用性があります。

かつて、パソコンや業務システムが多くの企業に導入されていったように、今後はAIが産業構造を変えていくと見られています。

以下に代表的な事例をご紹介します。

AIが最も注目されている分野のひとつが自動運転です。

画像認識やセンサー技術を組み合わせた高度な制御が求められ、ディープラーニングの活用が不可欠です。

米国ではテスラやNVIDIA、中国ではSenseTimeなどが開発をリードしており、日本でもトヨタが「Woven City」プロジェクトを通じて実証実験を進めています。

国内ではヤマト運輸とDeNAの協業による「ロボネコヤマト」も話題となりましたが、日本特有の交通事情もあり、実装の難易度が高いことが課題となっています。

新型コロナの影響もあり、セルフレジが急速に普及しましたが、さらに進んだ形として「自動レジ」への関心が高まっています。

カメラとAIを組み合わせることで、商品を置くだけで認識・会計が可能になる仕組みが進化しており、代表例としてはAmazon Goが挙げられます。

このような技術の背景には、画像認識や物体検出といったAIの活用があります。

企業のWebサイトやSNSにおける問い合わせ対応では、AIを活用したチャットボットの導入が一般的になっています。

コールセンター領域では、音声認識AIを使って適切な対応を自動で返すサービスも登場しています。

監視カメラ×顔認識:中国では、AIによる監視体制が国策レベルで導入されており、個人の行動をリアルタイムで把握する事例も存在します。

翻訳・通訳:大量の音声データを用いた学習により、音声自動翻訳ツールの精度が飛躍的に向上しています。

物流分野:検品や仕分け、配送ルート最適化などにAIが使われ、人手不足や業務効率化への対策が進められています。

このように、AIは多くの業界・業務に組み込まれはじめており、今後もその活用領域は拡大していくと予想されます。

AIエンジニアとしてのキャリアを目指すには、こうした社会全体の変化を理解し、自らスキルを磨いていく姿勢が求められると言えるでしょう。

アメリカや中国などでは、すでに多くのビジネスシーンでAI技術の活用が進んでいますが、日本ではまだ導入が本格化していないケースも少なくありません。

ボストンコンサルティンググループが2018年に発表した調査によると、日本はアメリカ・中国・ドイツなどと比較して、業務にAIを活用している割合が最も低いという結果が出ています。

これは、かつてIT技術が導入され始めた際にも見られた傾向で、日本では新しい技術の実装に慎重になる傾向があると言えるかもしれません。

とはいえ、日本国内でもAI活用の動きは着実に広がっており、導入が遅れている分、今後の成長余地が大きいとも考えられます。

AI分野は国内市場に限らず、グローバル市場でも将来性の高い領域であり、今後のキャリアを築く上で注目すべき分野のひとつです。

AI技術を活用したシステム開発に不可欠な存在である「AIエンジニア」について見ていきましょう。

ITエンジニアと比べても、AIエンジニアには独自の知識やスキルが求められます。

ITエンジニアがクライアントの要望に基づいてシステムを開発するのに対し、AIエンジニアは「どのようなデータを活用し、どう課題を解決するか」という視点から、企画・提案段階から携わるのが大きな特徴です。

AI分野の職種は大きく以下の3つに分類できます。

機械学習エンジニアは、AIの中核技術である「機械学習」に関わる開発を担います。

Pythonをはじめとするプログラミング言語を用い、AIモデルの構築やWebサービスへの実装、運用までを手がける職種です。

特にPythonは、AI関連のライブラリやフレームワークが豊富にそろっており、2015年頃のAIブーム以降、日本国内でもAIエンジニアを中心に需要が拡大しています。

データサイエンティストは、ビッグデータの解析を通じて課題の発見と解決を支援する役割を担います。
アルゴリズムや統計学の知見を活かし、仮説立案、施策設計、検証・改善まで一連のPDCAを回すスキルが求められます。

コンサルティングファームではクライアント向けに、事業会社では自社の事業課題解決のために分析を行います。

たとえば、ゲーム業界ではプレイデータからユーザー行動を分析し、課金や難易度の調整に反映させるケースなどが代表例です。

また、EC業界ではレコメンドエンジンの改善や、購買行動の最適化に貢献するなど、幅広い分野で活躍の場があります。

データアナリストは、データ分析に特化した職種で、データサイエンティストと似ている部分もありますが、より「分析と報告」に重きを置く傾向があります。

業務内容によって、「コンサル型」「エンジニア型」の2タイプに分類されることがあります。

クライアントや事業部門の課題に対して、分析をもとに仮説と解決策を提案します。

論理的思考力や課題設定力が求められます。

ユーザー行動のパターンを抽出し、具体的な改善策を提示します。

たとえば、どのステージでユーザーが離脱しているかを把握し、その要因を特定するといった実務的な役割を担います。

なお、これらの分析業務を横断的にこなす職種が、より上位のポジションとしての「データサイエンティスト」と言えるでしょう。

AIエンジニアは現在、慢性的な人材不足が続いています。

日本全体が少子高齢化による労働人口の減少に直面していますが、AIエンジニアに関してはそれ以上に、求められる専門性の高さが人材不足の要因となっています。

ITエンジニアの経験があっても、すぐにAIエンジニアになれるとは限りません。

統計学や機械学習、ビジネス課題に対する理解力といった、AIならではの知識とスキルが必要です。

加えて、AI人材の需要は国内外で急拡大しており、グローバルな人材獲得競争も激化しています。

海外では、日本よりもはるかに高い報酬条件を提示するケースもあり、実際に海外企業で働くAIエンジニアも増えています。

国内においても今後、AIエンジニア向けの好条件求人が増えていくと見られています。

たとえば、以下はAI分野でよく使われるPythonスキルを持つ人材に対する需要を示すデータです。

有効求人倍率の一例(2021年12月調査)
ITエンジニア全体(AIエンジニア含む):17.8倍

Pythonスキル保有者:53.1倍
※参考:レバテック株式会社「正社員転職・フリーランス市場動向」
※日本全体の平均有効求人倍率(2022年2月時点):1.21倍

この数値からも、AI人材がいかに高く求められているかが分かります。

AIエンジニアとしてのキャリアを目指すには、一定の専門知識とスキルが必要です。

ここでは主な学習手段を3つご紹介します。

働きながら学びたい方には、社会人向けのプログラミングスクールが有効です。

近年では、AI領域に特化したスクールも登場しており、実践的なスキルを身につける機会が増えています。

オンライン受講が可能なスクールも多く、学び方の選択肢は広がっていますが、カリキュラムの多くは「基本的なプログラミング経験あり」を前提としている点に注意が必要です。

未経験者の方は、自分のスキルレベルに合ったスクールを選びましょう。

AI人材の育成は国の重要な政策課題にもなっており、AI分野のカリキュラムを備えた大学や専門学校も増えています。

プログラミングだけでなく、統計学や数理最適化など、AIに必要な理論的知識を体系的に学ぶことができます。

たとえば、東京大学の松尾豊教授や、東京都立大学の小野順貴教授など、日本のAI研究を牽引する教授が在籍する学部もあります。

学びたい分野に応じて、学校のカリキュラムや指導陣をしっかりと確認しましょう。

独学でもAIエンジニアに必要なスキルを習得することは可能です。

書籍やオンライン教材、技術イベントやコミュニティに積極的に参加することで、実践力を高めていくことができます。

実際、技術力の高いエンジニアほど、自ら学び、試し、知識を吸収する「自走力」を重視している傾向があります。

スクールや学校で基礎を固めた後は、能動的な学習を続ける姿勢が、キャリア形成において非常に重要です。

AIエンジニアとして転職を目指す際、現職が忙しくなかなか時間を取れないという方も多いかもしれません。

そんな方に向けて、効率的に転職活動を進める2つの方法をご紹介します。

近年では「スカウトを待つ」スタイルの転職が一般化しており、以下のようなサービスが活用されています

ビズリーチ
リクルートダイレクトスカウト
エンミドルの転職

これらのサービスに登録することで、企業や転職エージェントからスカウトが届き、自分のスキルやキャリアに合った求人情報を効率的に収集できます。

自分のキャリアプランを相談しながら進めたい方には、転職エージェントの活用もおすすめです。

転職は、キャリアや将来を見つめ直す大切な機会です。

経験や強み、希望を踏まえた上で、相性の良いエージェントを選びましょう。

特にAIやIT分野に強い専門エージェントを選ぶと、より的確な提案が受けられます。

AIエンジニアは、今後もますます需要が高まる職種です。

高度なスキルが求められる分、待遇ややりがいの面でも大きな魅力がある仕事です。

ITエンジニアとしての経験を活かしたキャリアアップや、スタートアップ・ベンチャー企業での挑戦など、さまざまな選択肢があります。

将来性のあるAI領域で、新たなキャリアの一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。