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【転職体験談】40代、安定と停滞感

2026.01.14

転職体験談

【転職体験談】40代、安定と停滞感

 

あのとき、もう四十六歳だったのか。
大手町のスターバックスで雑踏を眺めながら、ふと振り返った。

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大学卒業後、SIerでキャリアをスタートし、その後二度の転職を経て、
事業会社の情報システム部門で6年働いていた。

現場とマネジメントの中間に位置する立場で、
ノルマやプレッシャーは比較的少ないポジション。
日々の業務は安定していた。

四十代になってから、仕事で困ることはほとんどなくなったように思う。

会議で何を聞かれても、大体の答えは用意できる。
過去の経験の中に、似たような場面はいくらでもあった。
場を荒立てない言い回しも、
議論をまとめる落としどころも、
自然と身についていた。

その一方で、何かに強く惹かれることは減っていた。
若手から新しい取り組みの話を聞いても、胸が高鳴ることはない。
期待よりも「おそらくこうなるだろう」という予測が先に立つ。

 

 

たまたま知り合いから紹介されたエージェントに、なんとなく話を聞いてみた。

転職を考えた理由を聞かれたとき、私は少し押し黙った。
不満があるわけではない。
年収も、立場も、職場環境も、客観的に見れば十分に恵まれているのだろう。
この状態を手放す理由をうまく説明できなかった。

ただ、今の仕事をこのまま続けた先の自分が、あまり想像できなかった。
五年後も十年後も、同じ説明をし、同じ判断を下しているのだろうか。

 

 

面談の最後、私は答えを出さなかった。
転職するともしないとも言わず、話を持ち帰った。
辞表も応募書類も、書く気にならなかった。

それでも翌朝、駅へ向かう足取りは、
以前より少しだけ遅くなった。
歩きながら考える時間が増えたのかもしれない。

 

 

数日後、私は引き出しを開け、履歴書を書き始めた。
大きな決意があったわけではない。
ただ、何も動かないままでいることへの苛立ちの方が
強くなってきたからだと思う。

その選択や行動が正解かどうかは、まだ分からなかった。
だが少なくとも、考えるだけの状態からは、一歩外に出たのだと思う。

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いま振り返ると、
転職に踏み出す明確なきっかけは何もなかった。

ただ、人生の転機に、
必ずしも分かりやすい理由や事件がある訳ではないのだと思う。

ラテを片付け、新しい職場に歩き出す。
ときどき、あの日の朝を思い出す。
駅へ向かう足取りがほんの少し遅くなった、あの感覚を。

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